冬虫夏草市場とオーガニックの人工栽培

成分情報

冬虫夏草とかいて「とうちゅうかそう」と読みます。 コウモリガの蛾の幼虫に寄生する草(キノコ)のことで、古くから効果効能の高い漢方生薬、または四川料理等でも使われてきたものです。

冬虫夏草は標高4200~6400m のチベットの山岳地帯で生育するキノコの一種です。乱獲が進み、野生のものはなかなか入手困難な状況になりました。 そこで、日本のみならず、世界中で人工栽培が進んでいます。本来の野生種が入手困難で高価なため、一般人には野生種を入手することはほぼ不可能で、人工栽培品もたくさん存在するため、判別・選択も難しくなっています。  

しかしながら、サプリメントのロングセラーの王様・ローヤルゼリーとともに冬虫夏草は今まで長い間愛用されてきたのも事実です。   ここでは、冬虫夏草の市場や特徴、オーガニック品を含む原料の違いについてもご紹介いたします。  

冬虫夏草市場の現実

中国紙「北京青年報」によると、日本でも人気がある漢方薬の材料「冬虫夏草(とうちゅうかそう)」をより高く売るため、金属粉を塗りつけたり液を注入したりして重さを増やす悪徳商法が中国で横行しているようです。
ニュースの続きはこちら(Yomiuri Newsより)
 
冬虫夏草は投機対象にもなっており、現在1グラム当たり約600元(約7800円)で、30年前の1000倍以上の高価格。
 
主要産地である青海省の冬虫夏草協会会長によると、市場には、ニセモノが出回っているだけでなく、本物でも、業者が金属粉を塗りつけるなどの行為が見られる。
 
同紙記者が北京市内の販売店を取材したところ、商品の大半に粘土状の物質が付着していたという。金属が混入された冬虫夏草を服用すれば健康被害をもたらす可能性があるが、業者は「販売店は皆、出来るだけ重くしようとしている」と話す。
 
同じく高価で取引されている食材・燕の巣も偽者が多く流通されているようです。上記のような例は論外ですが、野生種にも種別によるランク付けだけでなく、状態(品質)によってランク付けがされています。
 
偽物が出回る背景に、冬虫夏草の世界で最高品質といわれるチベット産の野生種(Cordycep sinensis)は、乱獲が進んだ影響で、現在絶滅危機に瀕していて、かなり高額なものになり、入手しづらいことがあります。

市場で販売されている冬虫夏草の種類

この流れをいち早く汲み取ったアメリカの研究者は、チベット産の野生種を用いた人工培養を始め、現在、米国で野生種とほぼ同じDNAを持つ冬虫夏草の人工培養、大量生産に成功し、製造しています。  

一口に冬虫夏草といっても300種類以上あり、本来冬虫夏草と呼べるのは、中国ではコウモリガに寄生したもののみ冬虫夏草 (Cordyceps Sinensis) と言う定義付けがされています。

しかしながら、世界各地で人工栽培は進んでおり、中には本来の野生種を凌ぐ栄養価の高いものが作られています。蚕など昆虫由来の人工栽培品もありますが、コストもかかり品質管理の労力等、なかなか難しい面があるといわれています。

日本で冬虫夏草の人工栽培に成功しているのは、Cordyceps militaris という種類のもので、Cordyceps Sinensisに比べると人工培養が容易かつ低コストで行えるというメリットがあるようです。

サプリで使用される冬虫夏草の原料と栄養成分

冬虫夏草のサプリメントをネットで検索すると、とても安価なものから高額なものまで幅広い商品が売られているのに気づくと思います。この違いはどこから来るのか?

大きな要因は原料の違いです。冬虫夏草の厳密な種類でまず分かれます。培養にコストがかかっていれば、当然原料コストは上がります。培養品で多く流通されているのは、先に挙げたCordycep militarisという種で、 培養のしやすさから 比較的安価な原料が多いです。

また、使用部位によっても変わります。多くの安価な原料は菌糸体と言って、根の部分をエキス抽出して使用しています。栄養価は使用部位によって変わってきますが、代表的な成分は、β-グルカン(多糖類)、コルジシピンなどです。

冬虫夏草の商品および原料を見極めるときには、①原産地、②品種、③使用部位、④栄養成分の規格をチェックするとよいでしょう。

冬虫夏草の伝統的な使用用途

漢方の世界では、冬虫夏草は、陰に栄養を与え、陽を促進するといわれ、肺と腎臓の経路を 活性化させると信じられています。日本には、1850 年頃日本人の植物学者が中国より輸入 を始め、”冬虫夏草(トウチュウカソウ)”と名づけました。

冬虫夏草は、様々な疾患に対して役立つと証明されています。高地の環境下で育つそのキノ コは、摂取する人々にバイタリティと強さを与えると考えられています。次に挙げるのは、 冬虫夏草の成分と作用、伝統的な使用用途です。

【生理活性成分】
・ポリサッカライド(多糖類)
・デオキシヌクレオシド(コルジシピン:抗炎症、抗腫瘍作用)
・ヒドロキシ-エチルアデノシン(コルジシピンと異なるメカニズムで働く抗ウィルス物質)

【冬虫夏草の用途】
・抗ぜんそく・気管支炎
・アテローム性動脈硬化(虚血性心疾患)抑制。
・コレステロールの低下
・難治性不整脈の安全かつ効果的な抑制
・糖尿病抑制
・抗ウィルス(HIV、HBV)
・肝硬変の予防
・スタミナ向上と疲労回復
・性欲および精子数の増加

西洋と冬虫夏草との出会いは、18世紀まで遡り、その後中国を中心に数々の臨床研究の論文が出稿されるようになりましたが、使用されている多くは野生種(Cordycep sinensis)です。

オーガニックの人工栽培品とその優位性

冬虫夏草の人工栽培品は珍しいものではなくなりました。今や本場中国を始め、日本の各地、アメリカではバイオ・特許技術により、野生種とほぼ同じDNAを持つオーガニック栽培品も流通されています。オーガニック品の場合、昆虫を一切使用せず、オーガニックの植物を使用して培養しています。

何といっても「冬虫夏草」という漢字にも表れるように、虫をイメージしてしまい、一般的に「まずそう」といった摂取しづらい印象があります。オーガニック品は、元々名前は知っていたけれど冬虫夏草の摂取に抵抗のあったベジタリアン(ハラル)の方、女性、若い方々には朗報と思います。

実際オーガニック品の味は昆虫由来のものと比べて、きな粉のような風味でかなり飲みやすくなっており、1日の推奨量(1.5g~)がとりやすいのが大きなメリットです。

 

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